調合したばかりの香水と、2週間後の香水は、同じ配合でも香りが違います。これは感覚の問題ではなく、素材間の化学反応と揮発バランスの変化によるものです。Bay Blend Vaultが全品に14日間の熟成期間を設けている理由を説明します。

調合直後に何が起きているか

調合直後は、各素材がアルコールに溶け込んだばかりの状態です。素材同士がまだ「馴染んでいない」状態で、トップノートの揮発成分が突出して感じられます。柑橘 誠一が強すぎたり、アルコール臭が前面に出たりするのはこのためです。この段階で香りを評価すると、完成品とは異なる印象を受けます。

熟成中に起きる変化

熟成期間中、素材の分子はアルコールの中でゆっくりと結合し、エステル化などの反応が進みます。揮発速度の速い成分が落ち着き、ミドルノートとベースノートが前面に出てきます。また、素材同士の相性が「なじむ」ことで、配合全体が一つの香りとして統合されます。この変化は、温度と光の管理が適切な環境でのみ安定して起きます。

14日間という基準の根拠

Bay Blend Vaultでは、試作段階で7日後、10日後、14日後、21日後の香りを比較するテストを繰り返しました。ほとんどの配合で、14日後と21日後の差は小さく、7日後と14日後の差は大きいという結果でした。14日間が、品質と納期のバランスが取れた最短ラインです。一部の重い素材(ラブダナム、パチョリなど)を多く使う配合では、21日間熟成させることもあります。

熟成環境の管理

熟成中は、遮光瓶を使用し、温度18〜22度、湿度50〜60%の棚で保管します。紫外線は香料成分を分解するため、遮光は必須です。温度が高すぎると揮発が早まり、低すぎると反応が遅くなります。この管理のために、アトリエには小型の温湿度計を3箇所に設置しています。橘 誠一象観測の趣味が、ここでも役立っています。

熟成期間を経た香りを実際に試したい方は、ご来店時に試香をどうぞ。調合直後のサンプルと比較していただくこともできます。