「産地にこだわる意味があるのか」という質問を受けることがあります。あります。同じ植物から採れた精油でも、産地によって成分比率が異なり、香りの印象が変わります。Bay Blend Vaultが原料の産地を明記している理由と、具体的な違いの例を紹介します。

産地が成分比率に影響する理由

植物の香り成分は、土壌、気候、収穫時期によって変化します。同じラベンダーでも、プロヴァンス産とブルガリア産では、リナロールとリナリルアセテートの比率が異なります。これは農業における「テロワール」と同じ概念です。香水の文脈では、この差が配合全体のバランスに影響するため、産地を固定することが再現性につながります。

グラース産ネロリの具体的な特徴

Bay Blend Vaultの「朝の港」に使用しているグラース産ネロリは、モロッコ産と比べてリナロールの比率が高く、フローラルな印象が強いです。モロッコ産はより甘く、オレンジの果皮に近い印象があります。「朝の港」では海塩と組み合わせるため、フローラル寄りのグラース産の方が配合に合っています。産地を変えると、同じ配合比率でも香りの方向性が変わります。

国産素材を使う理由

柚子精油と杉精油については、国産素材を使用しています。柚子は高知県産と愛媛県産を試した結果、高知県産の方が果皮の苦みが少なく、フレグランスに使いやすいと判断しました。杉は奈良県吉野産を使用しています。輸入の杉精油(主に中国産)は樟脳に近い成分が多く、日本の杉林の印象とは異なります。

産地の固定と仕入れリスク

産地を固定することには、仕入れリスクもあります。「雨後の杉」で使用していた吉野産杉精油の仕入れ先が2025年に廃業し、新しい生産者を探すのに半年かかりました。それでも産地を変えることはしませんでした。産地を変えると配合を再設計する必要があり、それは別のフレグランスになるからです。仕入れが安定しない素材については、在庫を多めに確保するようにしています。

使用している原料の産地については、ご来店時にお尋ねください。配合シートとともに、産地情報もお見せします。